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Mr.Children  TOUR2004 シフクノオト

〜横浜国際総合競技場〜


 空を見上げると、灰色の雲がたちこめていた。雨が降り出したとしても不思議ではない、そんな空だった。アリーナ席、H11ブロック175番。
 アリーナは、縦にA,B,C・・・と割り振られており、ここからではメンバーの姿は、とても見えそうにない。

 目線を、ステージからもっと上に向け、もういちど空を見ると、黒い、鳥のようなものが、スーッと、頭上高いところを通りすぎた。カメラだ。

 開演時刻の6時が過ぎた。ここにいる誰もが、今か今かと心待ちにしている瞬間。照明が切り替わり、うわぁっ・・・という歓声とともに、観客全員が立ち上がった。ギターのイントロ。聴こえてきたのは 「終わりなき旅」。
 あの、活動休止後の最初のシングルが、この曲だった。それぞれの思いを抱えて、会場は、ざわめきに包まれた。

 メンバーを映し出すモニターは、少し遅れて点き、ようやく姿を確認できた。黒い Vネックの長袖 Tシャツに、白いボタンシャツを羽織っている・・・のは、桜井さん。ほかのメンバーは、サポートメンバーも含め皆、黒っぽい衣装だった。

 続けて 「光の射す方へ」。
 メロディー(コード)のせいで、アップテンポなのに悲しみを感じる。けれど、希望も感じる。
 皆の両手が上がり、♪ u-wow wow wow wow〜 と、♪光の射す方へ〜 のところは大合唱。 さすが野外! 最後の ♪光の射す方へ〜 で、ステージの下方から、花火が打ち上げられ、ここでもまた、うわぁ〜 と歓声があがった。

 3曲目は 「PADDLE」。いよいよ シフクノオトらしくなってきた。次は、イノセント・ワールドのはず! ・・・あれ? 「名もなき詩」 が始まる。キャーとも、ギャーともとれる、たくさんの声、声、声!

   知らぬ間に築いていた自分らしさの檻の中で
   もがいているなら
   僕だってそうなんだ

 「こんばんはー! ミスター・チルドレンです!」

 「こんな大きな場所は、ミスター・チルドレン史上、はじめてのことなので、これを記録に残そうと、カメラが回っています。盛り上がっていなくとも、盛り上がっているように撮らなければ」

 「あまりに大きな会場なので、思わず仏壇に手を合わせてしまいました。宇宙人もオバケも見たことがないのだけれど、昨日、家を出てくるとき、ヤモリを見まして。・・・で、ここにタクシーに乗って来たわけですが、ふと見ると、そのヤモリが、カバンにくっついていたんですよ。・・・ヤモリは、南の島では幸運のしるし、と言われていますが・・・ヤモリが、カバンについてたことがある人!」

 左手のスタンド席から 「ハーイ」 と男性の声がした。

 そんな、普段着のようなMCから始まり、やがて曲の紹介となる。

 「ずっと昔に作ったラブ・ソングもあり、ごく最近のものもあり・・・」

 シングルとは違ったアレンジで、「口笛」 がはじまった。曲の終わりごろのメロディーを、桜井さんは、口笛で吹いてくれた。

 この曲が発売された頃、彼は、「わかりやすいラブ・ソングを作ってみました」・・・雑誌のインタビューで、そう話していた。けれど・・・。何度も聴くうちに、違った意味にも響いてきてしまい、ボロボロ泣けたっけ。

 「抱きしめたい」 「Everything(it’s you)」 と、続く。曲が切り替わる度に、あがる歓声。Everything(it’s you) も別アレンジで、これもなかなか良かった。

 「Pink〜奇妙な夢」 が始まる。

 「私、これ好きなんだ。このあやしい感じが・・・」

 隣の友人が言った。私は うんうん、と頷く。一編の小説のようだ。そのまま、「血の管」へと続く。次のイントロで、また大歓声。「掌」だ。

 激しいナンバーが続く。「ニシエヒガシエ」。ハンドマイクを持ち、モニターの前にしゃがみこんで、ほとんど音程がないような歌い方をする。目は、うつろ。「コワーイ」というような声もどこかから聞こえてくる。

 「ニシエヒガシエ」 とは一変し、「Image」。この曲は、あまり聴きこんでいないけれど、展開してからの部分がいいな・・・と、今日あらためて感じた。
 「overture」 からそのまま「蘇生」 へ。12・21の横浜アリーナを思い出す。そのリハーサルのときに、誰もいないのに、お客さんの歌う声が聴こえる・・・って言ってた桜井さん。音楽の神様だ!・・・って。

 そしてついに! innocent world ! 曲が流れ出すと、うわぁっ〜・・・と、波のようなどよめき、歓声。

   黄昏の街を背に 抱き合えたあの頃が 胸をかすめる

 ボーカルを客席にゆだね、桜井さんはステージをゆっくりと歩く。モニターには、歌う ”みんな” が映し出された。ああ、前もこんなだったな・・・。過去のライブの記憶が重なる。POP SAURUS も、中継で見た、横浜アリーナも、今、このメロディーでつながる。
 ♪いつの日もこの胸に〜 のところから、ハンドマイクで桜井さんが加わった。

 次は・・・? 聴こえてくる音からは、すぐには想像がつかない。
 あ、youthful days だ! 客席の手拍子が、反響して倍に響き、裏打ちの分まできこえる。

 そして 「くるみ」。
 それから、予想外の 「Any」。前もって調べてきたセット・リストには、入っていなかったから。スクリーンには、Any のプロモーションビデオが映っていた。

 もう、エンディングも近いであろう。桜井さんの声、前半よりも後半のほうがよく出ている。

 さあ! そろそろ時間だ! 「天頂バス」。
 映像はアニメーション。1人の男性が、カバンを持ってバスに乗り込む。
 ♪トンネルを抜けると〜 のところは、イメージしていた、そのままの映像だった。高速道路を運転しているときの、連続して現れる、あの光と影。

 もう、何曲目だろう。最後かな。・・・「HERO」 だ。この曲のイントロを聴くと心は、悲しいような、つらいような、それでいてあたたかな、気持ちになる。

 「どうもありがとーう!」

 メンバーが、ステージを後にする。照明が消える。たくさん演奏してくれたのに、ほんとうに、あっという間だった。いったん、イスに座る。

 「桜井さーーん!!」 という声の次に多かったのが 「ジェーーン!!」 だった。田原さん、中川さん、浦さん、を呼ぶ声もきこえた。
 叫びたい・・・が、叫べない。心の中では、叫んでる、のに。

 照明がついた。キャー! と、また立ち上がる。メンバーはみな、いったん着替えたようだ。そうとう汗、かいていたもの。

 桜井 「えー、鈴木くんを、もっと前で見たい人のために」

 ドラム・セットをはじめ、楽器がすべてステージの前のほうに出ている。 桜井さんが続けて言う。

 「ミスターチルドレンが、ですね。あなたの最寄りの駅の商店街か何かに来た、と思ってください」

 アンコールの始まり。
 「Mirror」 。石川公演で、キャンドルの灯りだけで演奏された曲だ。ステージの右側で、田原さんが、鉄琴をひいている。途中から、桜井さんが見守るように側へ行き、「シ〜」 というように、人差し指を口にあてる。
 こうやって、違った形で演奏されてしまうと、特に気にとめていなかった曲でも 大好きになってしまうから不思議。

 「Tomorrow never knows」 「タガタメ」。曲がはじまるたび、あがる歓声。
 そして 「Sign」。ラストの曲だ。

 「Sign」 の、”届いてくれるといいな”。
 「口笛」 の、”ごらん”。

 どうして、こんな歌詞なのかな。メロディーなのかな・・・。
 たとえ計算されているとしても、心の中に愛がなければ、それは伝わりはしない。
 彼は、彼らは、人間の、どんな感情も、わかっている・・・そんな気さえする。

 「やさしいね」

 桜井さん、私たち・・・買いかぶってなんか、いないよ。
 こうしてまた歌声を、メロディーを、聴けたことに感謝しながら、日常の中に、今日の想いを持ち帰ります。

 「どうもありがとーう! 気をつけて、帰ってください!」

 ステージから、笑顔で手を振るメンバーたち。
 そして心には、以前よりも、もっともっと、歌うこと・・・が、大好きになった桜井さんが映っていた。


2004. 9.12.SUN.   in 横浜国際総合競技場


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